2012年2月7日火曜日

本があればこそ

2週間ほど経過してしまいましたが、1月21日、谷川俊太郎さんが
北書店へ来てくださいました。




















イベント前日、新潟駅まで谷川さんをお迎えに行きました。
ホームで到着を待っている間も、「ホントに来るのかしら?」
という思いが少なからずありましたが、谷川さんはお一人で
大きなカバンを抱えてやってきてくださいました。

「谷川さん、ようこそ!あの・・・お荷物お持ちしますが・・・」

「あなた年寄り甘やかしちゃいけませんよ。さ、行きましょう!」

颯爽と階段を下りながら気さくに話しかけてくださる谷川さん。

「僕、雨男なんだよ」
「あ、私、比較的晴れ男です」
「じゃあ、アナタの勝ちだね」

この2週間の大寒波の予兆なのか、
谷川さんのいらした2日間はわりと穏やかな天候でした。
せっかく冬の新潟へいらっしゃったわけですから、雪景色を
お見せできたらよかったんですが、そう伝えると、
「来る途中でいっぱい見たからもういいよ」と。

宿へと向かう車の中で、さすがに軽く打ち合わせた方がいいかなと思い、
「谷川さん、明日の件ですがどういう流れで行きましょうか?」と聞けば、

「アナタ、同じ話2度するの好き?」
「いえ、苦手です」
「じゃあいいよ。明日話しましょう!」

お会いしてからこの間、約30分程度の時間でしたか、私は
「詩人、谷川俊太郎」を前にただもうシビレるばかり。
開店以来、初めての展開へ突入しようとしている北書店の会場設営をはじめる頃は
何だか緊張感はあるのですがそれ以上の高揚感がありました。

イベント当日、スタッフ含めて総勢100名近い人たちで北書店は満杯になりました。
狭い店内、書籍販売や席決めなど、スムーズに進行できたのはスタッフおよび、
ご来場いただいた皆様のご協力のおかげです。本当にありがとうございました。

本番はなんというか、あとはもう皆さんで谷川さんと楽しい時間を過ごしましょう
という程の気持ちでいたのですがいかがだったでしょうか?

本と本屋についてのお話をと、なんとなくそう決めて挑んだこのトークショー、
しかしそんな大枠は軽々飛び越えて気ままに、気さくにポンポンと飛び出すフレーズ。

「生まれたときから本の山に囲まれていて、今も読みたくても読みきれないほどの
本が手元にあって・・・「本」ていうのはさあ、僕にとっては愛憎半ばする存在」

「この前Tシャツ作ってね。『地元の詩人を大切にしましょう』って書いてあるの(爆笑)
北書店で扱ってくれる?」

「『ア○ゾン』便利だよ~(笑)。おたく扇風機売ってないでしょ?」
いや・・・谷川さんが「持って来い」と言うのならばどこへでも持って行きますがね。



「僕のデビュー作、『二十億光年の孤独』がいまだに書店で売られているというのは
本当にありがたいことです」

「谷川さんも私も、それからここにいる皆さんも、いつかはこの世からいなくなる
じゃないですか。確実に。だけどこの『二十億光年の孤独』は残りますよね」

「ホント?アンタそれ保障してくれる?(笑)」

そんなやりとりから話しは電子書籍、そしてまさかのア○ゾン礼賛へ。ここ、本屋なのに(笑)
昨日初めてお会いしたとは思えないような感覚に陥ってしまいそうでしたが、
谷川さんはとにかく明るくて元気で、それで自由だ。

「そんなことないんだよ。暗いんだよ僕」 
すぐにそんな答えが帰ってきます。

サービス精神全開の後半戦は詩の朗読など。
楽しい時間が過ぎるのって、こんなに早かったっけね?
最後は、朝の会だからとリクエストした、『朝のリレー』の朗読から
「歌で締めた方が盛り上がるんだから(笑)」と、『誰もしらない』をカラオケで。
これがまたよかった!『NHKみんなのうた』の第1回目の放送なんですか?
違うのかな?「わかんなかったら調べなさいよ!」と言う谷川さんの声が聞こえてきそう。
和田誠さんのイラストレーションが印象に残っていたのですが歌は聞いたことが
なかった。まさかご本人の生歌で聞けるとは。

真冬の白昼夢。あっという間の3時間は、記念写真撮影とサイン会で閉幕と
なりました。この記念写真ですが、お客様分の用意は出来ていますので、いつでも
取りにいらしてください。


谷川俊太郎さん、北書店へ来てくれてありがとうございました。

『二十億光年の孤独』はこれから先も読み継がれるでしょう。私が保証します。
あのとき、電子書籍に話題が移っちゃいましたが、この詩集は、やっぱり実体ある
「本」そのものがいいようですよ。サンリオ版の。或いは集英社文庫の。
私はこれからも、それをこの北書店から多くに人たちに手渡したいし、そういう毎日
の延長にこそ、こんな夢のような出来事は起こるんじゃないですか?
100年先の、どこかの家の本棚の片隅にある、よれよれになった『二十億光年の孤独』は
どこからやってきたのだろう?そんなことを想像するだけでも楽しいじゃないですか。
それではまた。ふたたびここへ来てくださることを願いつつ。そのときは掃除機でも
洗濯機でも、必要ならば遠慮なくお申し付けくださいね。用意しておきますから。

1年越しで実現した今回のイベントでしたが、周到な準備をしてお迎えすることは出来ず、
これがあと1年先だったとしても同じようにバタバタとしているに違いありません。
北書店はそういう本屋なのです。ですが、だからこそ実現できることもあるようです。
ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。これからも北書店をよろしくお願いいたします


さてさてバタバタは絶賛継続中です。結局直前になって大慌てしている有様。
今週末のお知らせがあるんですがいったんここで終了します。